減災計画研究小委員会
2011年3月11日に発生した東日本大震災は,岩手県・宮城県・福島県を中心とする地域で地震,津波,原発事故という災害連鎖を生み,死者・行方不明者合わせて2万人近い人的被害をもたらした.また,2013年9月に襲来した台風18号に伴う豪雨時には,「特別警報」を気象庁が初めて発表し,「ただちに命を守る行動」を喚起するメッセージが伝えられたが,「特別警報」が発令されなかった2013年10月の伊豆大島や2014年8月の広島でも,豪雨に伴う大規模な土砂災害により大きな被害が発生している. 東日本大震災での被害実態が解明されるに伴い,2013年5月には,南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)が内閣府よりまとめられ,6月には「災害対策基本法」の改正案が成立した.これらの動きの中では,災害時の被害を最小限にとどめんとする「減災」の考え方が重要視されているが,減災社会を推進するための対策は,実現することが困難なものが多く,そこに存在する課題は多岐に亘りかつ複雑であるため,その課題解決には様々な分野の研究者が個々に取り組むだけでなく,相互に知恵を出し合い連携しなければならない. 本研究小委員会活動では,被害を最小限にとどめんとする「減災」について,災害発生前から発災後の復旧・復興までの災害サイクルを考慮し,研究体制の構築を行う.最重要課題である「命を守ること」に対しては,自然災害を生き抜くための手法や知恵を模索するものであり,教育,訓練,情報,交通をキーワードに,災害を正しく恐れ,いざ災害が発生した際の判断力を磨く効果的な災害回避行動をとることや普段の生活における事前の備えができる地域社会の構築を目指す.また,命を守ったあと,どのように生活再建し,地域の復興を目指していくのかについても対象範囲とし,物流システム,事業継続計画(BCP),経済被害分析,リスク評価手法,災害保険設計など中心に経済復興過程として生じる災害サイクルの中での影響や効果等を把握するための方法論を構築するものとする. 研究活動を促進し,成果を共有するために,研究発表会(防災計画研究発表会,IDRiM等),全体ミーティング(委員会,フィールドワーク等)を年間数回程度行い,共通に利用可能な理論・調査方法・解析方法やそのためのマニュアル等の基盤情報を整備する.その上で,災害に対して即応し得る調査研究体制の構築を目指した体制整備を行う.提案された方法論が実際に機能し得るか否かに関しては,近年発生した災害や研究期間中に発生した災害を対象として検証を行う.